に囲まれた自然豊かな日本では、樹木として生えているときも、強い日差しを優しい木漏れ日に替え、冷たい風を防ぎ、さわやかな湿度を与え、観る者の心の拠り所となってきました。また、木はそれらを加工することによって、人々の生活の中で大変便利な材料として、昔から人々の生活に深く関わってきました。
こと建築に用いる木材は、強度・耐久・耐水性に優れ、加工性もよく、大きな断面と十分な長さを製材できるものが使われています。
もちろん現在では、集成材など小さな材料をつなぎ合わせた建材もありますが、基本的には、従来から使われてきた材種を用いています。
いずれにしても、木や草など樹木類・土や石・貝や海藻等自然素材を長い経験の中から見つけ出され、工夫されながら、加工して用いられてきました。
それらが全て生き物であり、建物の材料として姿を変えてもそれぞれの生き物としての生命力が満ちあふれています。
命ある材料を生き物として扱うことが、木の家を建てるためには重要です。
生き物である以上材料もまた年齢を重ね、人がシワや傷が増えるように、曲がったり、よじれたり、ひびが入ったり、それぞれの性格や環境により、変化していきます。
いつまでも均質で変化のない生き物はありません。
だからこそ、人や環境に優しく、暖かみのある豊かさを感じることができるのです。
木の家を建てたいという方々のご希望をまとめて要約すると、
- 自然素材で作った健康な家に住みたい。
- 光や風を沢山取り入れ、自然の恵みを十分に生かして欲しい。
- 地震や台風にも心配のない丈夫で長持ちする家が欲しい。
等々。誠にもっともなご要望かと思います。
しかしながら昨今、長らく人工的な素材に囲まれ、均質で、狂いのない製品にふれてきたために、自然素材というイメージだけが先行し、レトルト食品のような機械的な製品でないと受け入れられなくなってきてしまっているようにさえ思えます。
ここで再び、手のかかる子供のようにやっかいな面もあるけれど、私たちと同じ生き物である「木」に代表される自然素材に囲まれた生活をしてみたらいかがでしょうか。
というものに対して昨今、耐震性や、健康面などの観点から様々な新工法や新機能・新素材が出てきています。耐震工法・免震工法・外断熱工法・高気密高断熱工法・蓄熱暖房機・オール電化・ソーラー発電・パッシブソーラーハウス・エコハウス・自然素材等々、それぞれ大変研究された良い物が沢山開発されています。それらを適切に選択し組み合わせてゆくことで、「器としての家」は出来ます。
ついつい、機能性や経済性だけに目を奪われ、それらの選択や組み合わせを、機械的に行なってしまいがちです。それは、機能や性能だけの「物」に 支配された生活をしてしまう事に他なりません。
大切な事は、その家に住む家族それぞれが、どのような暮らしと、これからの自分の人生をどのように豊かに過ごしていくかを、何よりも優先に考えることだと思います。
まず家族の豊かな暮らしのために、どんな生活をしていくのか、どのように家族それぞれが接してゆき、地域の人々と関わりをもってゆくのかを第一に考え、それぞれの家族のより良い生活のための選択要素の一つと考えるべきです。
私共は、住宅のデザインをするときに、お施主様それぞれのお考えやご希望と共に、その裏側にある「人と成り」を住宅という空間の中に表現したいと思っています。
それは設計者のエゴによるデザインでは決して無く、その方たちらしい家と言ってもらえる様な、「住む方たちの顔が見える家」を理想と考えているからです。
我々は、最新の知識と職人の高い技術と手仕事による心を大切にする事によって、生き物としての素材の良さを最大限に引き出し、ご家族と共に時を過ごし、 共に成長し、控えめながら奥深い品を持ち、美しく朽ちていく、普通の家造りを目指しています。